アーユルヴェーダのドーシャと五元素の知恵

アーユルヴェーダのドーシャと五元素の知恵

めまぐるしく変化する現代社会。私たちは、意識しないうちに多くの刺激を受け、心や体のバランスを少しずつ見失ってしまうことがあります。それは、都会の喧騒であったり、日々感じている責任であったり、人間関係の問題であったりするかもしれません。

そんな揺らぎを感じる時は、自分自身と向き合い、本来の健やかさを取り戻すチャンスです。古代インドから受け継がれてきた生命の科学「アーユルヴェーダ」はそのための知恵の宝庫です。

「TULAVEDA」は、アーユルヴェーダの教えをベースに、現代を生きる私たちが、都会の生活の中でも、自然と調和した健やかなライフスタイルを送るためのお手伝いをしたい、と心から願っています。それは決して敷居の高いものではなく、むしろ毎日に小さな喜びと発見をもたらし、心を躍らせながら取り入れられるような提案を大切にしています。

アーユルヴェーダでまず知っておくと役立つのは「ドーシャ」という考え方です。ドーシャを理解することは、自分だけの「心と体の取扱説明書」を手に入れるようなもの。それは、自分の肌質や体質、心の傾向、そして何が自分を輝かせ、何がバランスを崩すのかを知ること。すると、本来の自分らしい健やかで美しい姿へと導いてくれる生活習慣、日々のスキンケアから食事などを選択できるようになります。

このコラムでは、「ドーシャ」とは一体何か、そしてそれが私たちの心身とどのように関わっているのかを、アーユルヴェーダの根底となる「五大元素」の視点も踏まえて書きたいと思います。

アーユルヴェーダの世界観の根底には、「宇宙のすべては繋がっている」という考え方があります。そして、その宇宙を構成する基本的な要素として「五大元素(パンチャマハーブータ)」が挙げられます。

私たち人間も、すべての物質と同様に、この宇宙の一部であり、五大元素から成り立っていると考えられています。この五つの元素を、生命活動を担う3つの働きに分けたエネルギーが「ドーシャ」です。

空(アーカーシャ)/空間

すべての物質が存在するための「空間」。軽やかさや広がり、そして音と関連する性質を持っています。

風(ヴァーユ)/動き

空間の中で生じる動き。変化や乾燥、軽さ、そして触覚(皮膚感覚)と関連します。

火(テージャス)/熱

光と熱のエネルギー。物事を変化させ、消化・吸収する力、そして視覚と関連します。

水(アーパス)/液体

流動性、結合力、そして潤いをもたらす性質を持ち、味覚と関連します。

地(プリティブ)/固体

物質的な形、構造、そして安定性をもたらす性質を持ち、嗅覚と関連します。

これら五つの元素は、単独で存在するのではなく、互いに関わり合い、影響し合いながら、私たちの心と体を形作っています。そして、この五大元素の組み合わせから作られるのが、3つの基本的な生命エネルギー「ドーシャ」です。

五大元素を「動き」「変換」「結合」という3つの働きに分けた生命エネルギーが「ドーシャ」です。この3つの働きがあるからこそ、生命は成り立ちます。どれか一つが欠ければ生命活動は成り立ちません。ドーシャは、自然界のありとあらゆる活動を説明し、また、私たちの一人一人の体質や生理機能、さらには思考や感情のパターンにまで深く関わっています。

ヴァータ(Vata)

「空」と「風」の元素から成り、動きのエネルギーを司ります。

ピッタ(Pitta)

「火」と(少量の)「水」の元素から成り、変換・代謝のエネルギーを司ります。

カパ(Kapha)

「水」と「地」の元素から成り、構造・結合のエネルギーを司ります。

私たちは誰もがこの3つのドーシャをすべて持っていますが、そのバランスは一人ひとり異なりす。受精時に決まる最も優勢なドーシャ(あるいは複数のドーシャの組み合わせ)が、その人の「本来の体質(プラクリティ)」です。プラクリティーはその人の設計図のようなもので、変わることはありません。

しかし、日々の食事、生活習慣、環境、季節、年齢など、様々な要因によって、このドーシャのバランスは常に変化します。この影響を受けて変化している現在の状態を「現在の体質(ヴィクリティ)」と呼びます。

天気が毎日違うように、環境は日々変動し、私たちの心や体の様子も変わります。調子がいい時もあればそうでない時もあるのは当たり前のこと。ですが、不調や不快な状態が長く続いているならば、本来の体質からバランスが大きく乱れているのかもしれません。

大切なのは、今の自分の状態に気づき、乱れすぎているドーシャを本来のバランスへと穏やかに整えてあげることです。そうすることで、私たちの内にある自然エネルギーが、外の世界の自然リズムと心地よく循環しはじめます。そのとき、心・体・思考は澄み、自分にとって本当に必要なもの、手放すべきものをクリアに選び取ることができるようになります。日々のちょっとした選択の積み重が、より主体的に、自分らしい輝きに満ちた生き方を実現するための土台となります。

ここからはご自身のドーシャの傾向を、五大元素の特徴を踏まえて探ってみましょう。

3. ヴァータ:軽やかに動く、空と風のエネルギー

ヴァータの質は、 軽さ、動き、乾燥、冷え、速さ、不規則、微細、などがあります。「空」の広がりと「風」の動きから生まれるヴァータは、その名の通り、軽やかで変化しやすいエネルギーです。

ヴァータが輝いているときは

想像力豊かで、インスピレーションに溢れ、新しいアイデアを次々と生み出します。好奇心が強く、フットワークも軽く、どんな環境にも比較的早く順応できます。おしゃべりも軽やかで楽しく、周りの人を明るくするコミュニケーション能力もヴァータの魅力です。生き生きとした爽快な印象を与えます。

肌質・髪質の特徴

「空」の軽さと「風」の乾燥の影響で、肌は薄く乾燥しがちです。繊細なきめの細かさも特徴ですが、冷えやすく、小じわやカサつきが気になることもあります。髪も同様に乾燥しやすく、パサついたり、枝毛ができやすい傾向があります。

ヴァータが乱れると

「風」が吹き荒れるように、心が落ち着かず、不安や心配事が絶えなくなったり、集中力が散漫になります。物忘れが多くなったり、眠りが浅くなったりすることも。「空」の要素が過剰になると、地に足がつかないような浮遊感を覚えることがあります。体は冷えやすく、乾燥肌、便秘、関節の音や痛みなどに悩まされることも。気分は変わりやすく、落ち着きを失いがちです。

ヴァータのバランスを整えるヒント

ヴァータの乱れを整えるには、「温める」「潤す」「規則正しさ」「ゆったりとした動き」「休息」がキーワードになります。

スキンケア

保湿力の高い、しっとりとしたテクスチャーのオイルやクリームがおすすめです。温かいセサミオイルなどでのマッサージは、乾燥を防ぎ、神経を鎮め、心を落ち着かせるのに役立ちます。甘く温かみのある香り(サンダルウッド、ラベンダー、ゼラニウムなど)が心地よいでしょう。

食事

温かく、しっとりとした、少し油分のある食事(ギーや良質なオイルを使ったもの)を心がけましょう。甘味、酸味、塩味のものがヴァータを落ち着かせます。生姜やシナモンなどの体を温めるスパイスも◎。冷たい飲み物や食べ物、乾燥した食品(パンやドライフルーツなど)、生の野菜の摂りすぎ、カフェインは控えめに。

ライフスタイル

規則正しい生活リズムと適度な休息を大切に。特に就寝時間を一定に保つことは、ヴァータの安定に繋がります。温かいお風呂にゆっくり浸かる、穏やかな音楽を聴く、瞑想や深呼吸で心を鎮めるなど、リラックスできる時間を作りましょう。騒がしい場所や刺激の強い環境は避け、穏やかで安心できる空間で過ごす工夫を。スケジュールには余白を。

4. ピッタ:情熱的に燃える、火と水のエネルギー

ピッタの質は、熱い、鋭い、軽い、油っぽい、などがあげられます。「火」の変換力と、(少量の)「水」の流動性から生まれるピッタは、太陽のようにエネルギッシュで、知性と情熱にあふれています。

ピッタが輝いているときは

知的で決断力があり、目標に向かって情熱的に、そして効率的・合理的に取り組むことができます。リーダーシップを発揮し、周囲を巻き込みながら物事を鋭く進めるのが得意です。シャープな思考力と鋭い洞察力を持ち、チャレンジ精神も旺盛で、輝くようなオーラを放ちます。

肌質・髪質の特徴

「火」の熱の影響で、肌は比較的柔らかく、温かい傾向があります。赤みが出やすかったり、日焼けしやすかったり、敏感に傾いたりすることも。ニキビや吹き出物、炎症、シミそばかすが気になることもあります。「水」の影響で適度な油分はありますが、熱が過剰になると水分が蒸発し乾燥に転じることも。髪は細くて柔らかく、ややウェーブがあることも。若白髪や抜け毛になりやすい傾向もあります。

ピッタが乱れると

「火」が燃えすぎると、イライラしやすく、怒りっぽくなったり、批判的になったりします。完璧主義になりすぎて、自分にも他人にも厳しくなりがちです。体には熱がこもりやすく、炎症性の肌トラブル(ニキビ、湿疹、じんましん)、胸やけ、胃酸過多、下痢、目の充血などに悩まされることもあります。過度な空腹感や喉の渇き、発汗過多を感じることも。

ピッタのバランスを整えるヒント

ピッタの乱れには、「冷やす」「鎮静」「適度なリラックス」「ほどほどに」がキーワードです。

スキンケア

鎮静効果のある、さっぱりとした使用感のものがおすすめです。刺激の少ない、ナチュラルな成分を選びましょう。クールダウンできるような化粧水や、ギーなど冷却作用のあるオイルも◎。ローズやミントのような爽やかで心を落ち着かせる香りが心地よいでしょう。

食事

熱を冷ます食材や季節によっては常温の食事を心がけましょう。甘味、苦味、渋味のものがピッタを鎮めます(例・キュウリ、甘い果物、ココナッツウォーターなど)。コリアンダーやローズなどの過剰な熱をとる作用のあるハーブやスパイス、消化力を整えるクミンなども◎。辛いもの、酸っぱいもの、塩辛いもの、発酵食品、アルコールは控えめに。

ライフスタイル

競争的な活動や過度なスケジュールは避け、心身をクールダウンさせリラックスする時間を意識的に作りましょう。自然の中を散歩したり、月光浴をしたり、水泳や水辺で過ごすのもおすすめです。穏やかな音楽を聴いたり、美しい景色を見たりして、心を和ませましょう。頑張りすぎず、適度に「まあ、いいか」と完璧を手放すことも大切です。

5. カパ:穏やかに潤す、水と地のエネルギー

カパの質は、冷たい、重い、遅い、鈍い、などがあげられます。「水」の結合力と「地」の安定から生まれるカパは、大地のようにどっしりと安定し、穏やかで滋愛に満ちています。

カパが輝いているときは

穏やかで優しく、寛容な心の持ち主です。忍耐力があり、物事を着実に、粘り強く最後までやり遂げることができます。体力があり、持久力があり、免疫力も高く、健康的で、周囲に安心感と癒やしを与えます。愛情深く、献身的で、困っている人を放っておけない優しさもあります。

肌質・髪質の特徴

「水」の潤いと「地」蓄積力により、肌は厚みがあり、しっとりとして滑らか、色白で透明感がある傾向があります。水分も油分が多いため、調子を崩すと、毛穴が詰まりやすかったり、むくみやすかったりすることも。「地」の要素が強いと、角質がたまりやすくなることも。髪は太く、豊かで、光沢があり、濃い色で、白髪や抜け毛の悩みは少なめです。

カパが乱れると

「水」が停滞し、「地」で固まるように、心身が重く感じられ、停滞しやすくなります。物事への執着が強くなり、変化を億劫に感じたり、無気力になったりすることも。朝起きるのが辛い、日中でも眠気が取れないといったことも。体は冷えやすく、むくみやすい、体重が増加しやすい、鼻づまりや痰が絡む、アレルギー性の症状、消化が遅いなどの不調が現れやすくなります。

カパのバランスを整えるヒント

カパの乱れには、「軽くする」「温める」「刺激を与える」「動かす」がキーワードです。

スキンケア

さっぱりとした使用感で、肌を引き締め、巡りを促すようなものがおすすめです。定期的なディープクレンジングやゴマージュなどで余分な皮脂や古い角質を取り除くのも良いでしょう。温かいハーブ(ジンジャー、シナモンなど)を使ったスチーム美容や、ドライブラッシングも効果的です。スパイシーで爽快感のある香り(ユーカリ、ローズマリー、ペパーミント)や、気分を高揚させるような柑橘系の香り(レモン、グレープフルーツ)がよいでしょう。

食事

温かく、軽く、乾燥した性質の食事を心がけましょう。苦味、辛味、渋味のものがカパを減らします(例:葉物野菜、スパイスの効いた料理)。生姜、黒胡椒、ターメリックなどの体を温め、軽くし、巡りを良くする刺激的なスパイスも◎。甘いもの、酸っぱいもの、塩辛いもの、油分の多いもの、乳製品(特に冷たいもの)、小麦製品の摂りすぎは控えめに。

ライフスタイル

積極的に体を動かすことが何よりも大切です。特に午前中に、少し汗をかくくらいの運動(ウォーキング、ジョギング、ダンスなど)を取り入れると効果的です。新しいことに挑戦したり、日々のルーティンに変化を取り入れたりして、心と体に刺激を与えましょう。早起きを心がけ、日中に活動的に過ごすのがおすすめです。溜め込まないように、定期的な断捨離で物理的にも精神的にも軽くなることを意識してください。

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